実家の片付け、何から始める?親を説得し、生前整理をスムーズに進めるコツ

実家の片付け、何から始める?親を説得し、生前整理をスムーズに進めるコツ

実家に帰るたびに、廊下の隅に積まれた段ボールや、台所の棚からあふれそうな紙袋が目に入る。「このままで大丈夫かな」と気になりつつ、「片付けてって言ったら、怒るかな」と言葉を飲み込んで帰ってくる。そんな帰省をくり返している方は、少なくないと思います。

こんにちは、「暮らしを整える買取ノート」のみのりです。今年の敬老の日は9月21日で、22日の休日と23日の秋分の日が続くため、19日の土曜日から数えると5連休になります。久しぶりに実家でゆっくり過ごす予定の方もいらっしゃるでしょう。

実は私も、この夏に一度失敗しています。以前の記事で、父が大切にしていたフィルムカメラを次の持ち主に譲ったお話を書きました。気をよくした私は、その勢いで台所の食器棚を開けて「このタッパー、もう使わないよね。捨てちゃおうか」と言ってしまったんです。母は「まだ使えるのに」とつぶやいたきり、黙ってしまいました。

この記事では、そんな失敗から学んだ親への切り出し方と、生前整理を何から始めればいいのか、出てきたモノをどこへ手放すのかを、整理収納アドバイザーとしての視点も交えてお話しします。

生前整理と遺品整理、いちばんの違いは「本人が選べるかどうか」

「生前整理」は、本人が元気なうちに自分の持ち物や財産、大事な情報を整理しておくことです。これに対して「遺品整理」は、亡くなったあとに家族が故人の持ち物を片付けることを指します。言葉は似ていても、中身はかなり違うんですよね。

項目生前整理遺品整理
進める人本人(家族は手伝い役)遺された家族
時期元気なうち亡くなったあと
本人の意思その場で確かめられる推し量るしかない
時間の余裕少しずつ進められる手続きと並行して短期間で進めがち

大きく違うのは、本人がモノの行き先を選べるかどうかです。遺品整理では「これは捨てていいのかな」と迷っても、聞く相手はもういません。結局まとめて処分してしまい、あとになって「あれは父の大事なものだったのかも」と悔やんだという話を、私も知人から何度か聞いてきました。

内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の人がいる世帯のうち、夫婦のみの世帯と一人暮らしの世帯がそれぞれ約3割を占めています。親だけで暮らす家では、モノが増えても気づく人がいません。整理収納アドバイザーとして私がいつも意識しているのは、「要る・要らないを決められるのは持ち主だけ」ということです。生前整理は、親が自分で選べるうちに、子どもが隣で手伝う形が無理のない進め方だと感じています。

親を説得するコツは、「捨てて」と言わないこと

「捨てる」を「使いやすくする」に言い換える

母を黙らせてしまったあと、冷静になって考えました。母にとってあのタッパーは、ただの容器ではなかったんです。毎朝私のお弁当を詰めてくれた道具で、「捨てる」という言葉は、母がしてきたことまで否定するように聞こえたのだと思います。それからは、同じことを伝えるにも言葉を選ぶようにしています。

つい言ってしまう一言言い換えの例
これ、もう捨てたら?よく使うものだけ、手前に出しておこうか
こんなに要らないでしょいちばん気に入っているのはどれ?
私が全部やっておくからどこから手をつけるか、一緒に決めよう
散らかってて危ないよ夜トイレに行くとき、ここ通りにくくない?

ゴールは「モノを減らすこと」ではなく、「今の暮らしが楽になること」に置きます。手放すモノは、その結果として自然に出てきます。

片付けの前に、思い出話を聞く

父のカメラがすんなり次の持ち主に渡ったのは、片付けの前に、父の昔話をたっぷり聞いたからだと思っています。どこで買ったのか、何を撮ったのか。ひとしきり話し終えた父は、「誰かに使ってもらえるなら、そのほうがいいな」と自分から言ってくれました。そのときのことは趣味のコレクション、価値がわかる人に譲りませんか?カメラ・オーディオ・楽器の買取事情に書いていますが、思い出を言葉にしてもらうと、モノへの気持ちに区切りがつくようなんです。遠回りに見えて、これがいちばんの近道でした。

決めるのは親、ペースも親に合わせる

子どもが「良かれと思って」勝手に捨てるのは、絶対に避けたいことです。一度信頼を失うと、その後の片付けがすべて止まってしまいます。手放すかどうかの最終判断は親に任せて、子どもは運ぶ、分ける、調べるといった手間のかかる部分を引き受けましょう。親の体力や集中力は、私たちが思う以上にすぐ尽きます。1回の作業は1時間まで、場所は1か所だけと決めておくと、「また次もやろうか」と言ってもらいやすくなります。話を切り出すのも、帰省の最終日より初日がおすすめです。帰り際に言うと言い逃げのようになって、親はモヤモヤを抱えたまま次の帰省まで過ごすことになってしまいます。

「安全のため」は、親の心に届きやすい

片付けの理由として受け入れてもらいやすいのが「安全」です。東京消防庁の「救急搬送データからみる高齢者の事故」によると、令和6年に東京消防庁管内で「ころぶ」事故により救急搬送された65歳以上の人は73,500人でした。そのうち住宅などで起きたものが42,180人で、9割以上にあたる39,053人は屋内での事故です。家の中で最も多い場所は居室・寝室で、29,783人にのぼります。同じページによると、日常生活の事故で救急搬送された高齢者の4割以上は、入院の必要がある中等症以上と診断されています。「家の中だから安心」とは言えないんですよね。

同じページでは、転倒を防ぐために、電源コードが通路にかからないよう電気製品の配置を工夫することも呼びかけています。「床に置いてあるモノの置き場所だけ決めようか」という提案なら、捨てる話をしなくても始められます。実家の父も、廊下に積んだ雑誌の束に一度つまずきかけてからは、通り道の片付けに乗り気になってくれました。

何から始める?小さな場所と、判断しやすいモノから

いきなり家じゅうを片付けようとすると、親も子も疲れ切ってしまいます。私が実家で試して、うまく進んだ順番はこうです。

順番場所・モノこの順番にする理由
1実家に残している自分の私物子どもが片付ける姿を先に見てもらえる
2玄関・廊下・階段などの通り道「安全のため」が伝わりやすい
3洗面所や台所の消耗品、期限切れのもの要るか要らないかで迷いにくい
4衣類・寝具量が多く、片付いた実感を得やすい
5本・趣味の道具・家具価値のあるものも混じるので、行き先を調べてから
6写真・手紙などの思い出の品気持ちの整理に時間がかかるので最後に

自分の私物から始めると、親は「片付けを迫られている」と感じにくくなります。私も学生時代の教科書や卒業アルバムを先に片付けたら、母のほうから「あなたがやってるなら、私も少しやろうかしら」と言ってくれました。

作業の日は、「残す」「迷う」「手放す」の3つの箱を用意しておくと進めやすくなります。迷う箱には日付を書いたメモを貼り、次の帰省のときにもう一度一緒に見直します。その場で決めきれなくても、箱に入れた時点で一歩前進です。

片付けの最中のけがにも気をつけたいところです。東京消防庁の同じデータでは、令和6年に「落ちる」事故で救急搬送された高齢者は8,719人で、約8割が住宅などで起きています。天袋や高い棚のモノを下ろす作業は子どもが引き受けて、親には座ったまま仕分けをお願いすると安心です。

思い出の品を最後に回すのは、ほかの場所で「選ぶ」ことに慣れてからのほうが、親自身が落ち着いて向き合えるからです。手放す前に写真を一枚撮っておくのもおすすめで、父のカメラを譲ったときに母と一緒に撮った一枚は、今では家族のいい記録になっています。

出てきたモノの行き先は「残す・譲る・売る・処分する」

仕分けが進むと、手放すモノがまとまって出てきます。行き先は、大きく4つに分けて考えています。

  • 今の暮らしで使うもの、手元に置いておきたいものは残す
  • まだ使えて、欲しい人がいるものは親戚や知人に譲る
  • ブランド食器や着物、カメラなど、中古で探している人がいるものは売る
  • 使えないもの、行き先が見つからないものは自治体のルールで処分する

親世代は「もったいない」という気持ちが強いので、「売る」「譲る」という出口があるだけで、手放す決心がつきやすくなります。手放し方の選び方は年末の大掃除で発見!不用品を「ごみ」にしない、賢い手放し方リストにもまとめていますので、あわせて読んでみてくださいね。

家電4品目は、粗大ごみには出せません

実家の片付けで意外と困るのが、古い大型家電です。家電製品協会の「3秒でえらべる家電の捨て方」によると、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は家電リサイクル法の対象で、処分にはリサイクル料金と収集・運搬料金がかかります。買い替えなら購入した店舗に引き取ってもらうのが簡単で、購入店がわからない場合は自治体の案内に沿って処分します。4品目以外の大きな家具や家電は粗大ごみとして出せることが多いものの、対象になる品目や申し込み方法、料金は自治体ごとに違うので、実家のある市区町村のホームページで確かめておきましょう。

「無料回収」と、突然の買取訪問に気をつける

同じページでは、「無料回収」や「格安回収」をうたう不用品回収業者の中に、家電リサイクル法を守っていない業者もいると注意を呼びかけています。家庭ごみを回収するには市区町村の許可が必要で、古物商の許可だけでは運べないことを、杉並区などの自治体も案内しています。

もうひとつ気をつけたいのが、親だけで家にいるときの買取業者の訪問です。国民生活センターの「訪問購入」のページによると、訪問購入に関する相談は2025年度に7,523件寄せられていて、「高齢の母の高額なアクセサリーを、家に来た買取業者が持ち去ったようだ」という事例も紹介されています。訪問購入は、法律で決められた書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフができ、その間は品物の引き渡しを断れます。それでも、確実なのは最初から家に上げないことです。実家の両親とは、「電話で買取の話が来ても、その場で約束しない」「誰かを家に上げるときは私に連絡する」と決めました。困ったときは消費者ホットライン「188」に電話すれば、近くの消費生活センターなどを案内してもらえます。

エンディングノートと大事な書類の置き場所も、一緒に確認を

モノと同じくらい大切なのが、大事な書類や情報の置き場所を家族で共有しておくことです。FPの勉強をしていたとき、相続の手続きでは「どこの銀行に口座があるのか」「どんな保険に入っているのか」がわからないだけで、家族が苦労すると知りました。実家では、次のものの置き場所を確認しています。

  • 通帳と印鑑
  • 保険証券
  • 年金の書類
  • 家の権利証や固定資産税の通知書
  • 診察券とお薬手帳
  • スマートフォンとパソコン

暗証番号まで子どもが聞き出す必要はなく、親自身がまとめたメモのしまい場所を教えてもらえれば十分です。そのメモ代わりになるのがエンディングノートで、遺言書のような法的な効力はありませんが、置き場所や医療・葬儀についての希望を書き留めておけます。

スマートフォンの中身も忘れずに。国民生活センターの「デジタル終活」についての発表によると、スマートフォンでインターネットを使う人は60代で78.3%、70代でも49.4%います。故人のスマホやパソコンのパスワードがわからないと第三者がロックを解除するのは難しく、ネット銀行の契約先がわからないという相談も寄せられているそうです。同センターは、使っているサービス名やID、パスワードを整理しておくことや、エンディングノートの活用を勧めています。

まとめ

実家の片付けは、「捨てて」と言わず、親の思い出に耳を傾けるところから始まります。決めるのは親で、手を動かすのは子ども。小さな場所と判断しやすいモノから進めて、思い出の品は最後に回します。出てきたモノは残す・譲る・売る・処分するの4つに振り分け、家電4品目の出し方や訪問購入のトラブルには気をつけておきましょう。

私は今度の連休に、廊下の段ボールを父と一緒に開ける約束をしています。中に何が入っているのか、父自身も覚えていないそうです。一度の帰省で全部を片付けようとしなくて大丈夫です。まずは「これ、いつ頃のもの?」と一つだけ聞いてみてください。その答えが、生前整理の最初の一歩になるはずです。

投稿者 みのり

「暮らしを整える買取ノート」へようこそ。かつての私は、モノを溜め込みがちなごく普通の主婦でした。でも、ある時気づいたんです。家に眠っている不用品は、未来の私を助けてくれる「資産」なんだって。このブログでは、私が実践してきた「捨てる」以外の選択肢、モノの価値を再発見し、賢く手放すヒントを綴っていきます。あなたの暮らしと家計を整えるお手伝いができたら、こんなに嬉しいことはありません。一緒に、心地よい暮らしを育てていきませんか?